君にとってのハッピーエンド、僕にとってのバッドエンド

あの苦しそうな顔が頭に浮かび、体が震える。もしも若菜に何かあったら、僕だって辛い。手の震えを誤魔化すために、必死で握り締めていた。

どれほど時間が経ったんだろう。診察室から驚きと喜ぶような声が聞こえてくる。何だ？何があった？

首を傾げていると、紫水圭が喜びながら診察室から顔を出す。そして僕を笑顔で手招きした。

「失礼します……」

診察室に入ると、若菜がベッドの上で横になり、幸せそうに微笑んでいた。その手はお腹を撫でている。

「若菜」

僕が声をかけると、さっきまで僕に怯えていた若菜はとても幸せそうな顔で「優二くん」と声をかけてきた。そして、僕が謝るよりも前に若菜の口が動く。

「私、妊娠してるんだって。妊娠二ヶ月！すごく嬉しくて幸せ」

「俺がお父さんになるのか……。幸せだな」

若菜を紫水圭が愛おしそうに撫で、微笑む。どうやら先ほどお腹を押さえていたのは、極度の恐怖と緊張でお腹が張ってしまったかららしい。