冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる~愛なき契約夫婦の艶美な一夜~
息子を失ったことは悲しいこと。辛いこと。

でもここにももう1人息子がいる。
何故か下座に座らされている息子がいるのよ。

お父様は響さんのことを無視するかのように話を進めている。

会社を持ち直したのも副社長に就任し、頑張ってきた響さんの尽力は小さなものではないだろう。

響さんはもともとお兄さんの補佐に徹するといろんな部門を周り、仕事に励んできていたと聞いている。
だからこそすぐに動けたのではないの?
それなのに…こんなの酷い。
実の親なのに。
響さんだってお兄さんを失って同じように辛いのに…。


ふと横を見ると膝の上で手をギュッと握りしめる響さんがいた。
その瞳は社長を見据え、視線を逸らすことなく挑むような顔にさえみえた。

悔しいよね、悲しいよね、認めてもらいたいよね…
私は響さんの思いに共鳴するように彼の拳を上から包み込んだ。
誰にも見えないように…。
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