冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる~愛なき契約夫婦の艶美な一夜~
私の手が重なり響さんは驚いたように私を見つめてきた。

私は響さんの目を見て頷き、響さんも頷いた。
そして響さんは握りしめた手を緩め、私と絡み合うように握り返してきた。

献盃が済み、みんなで食事を始めると酔いが回った1人が響さんに絡みにきた。

「おい、響。お前が山に一緒に行かなかったから誠が死んだんだ。お前が行っていたら助かったのに。優秀な兄貴が死ぬなんてなぁ。お前じゃなくてさ…。」

「……そうですね。一緒に行かなかったことを俺も悔やんでも悩みきれないです。」

「そうだろう。でもお陰でお前は甘い汁が吸えたな。」

「…」

「何も言えないよなぁ。兄貴の尻ばかり追いかけてたお前が副社長になるなんてさぁ。ラッキーだったよな。」

「おい、このくらいにしておけよ。」
周りの叔父達が止めに入るが響さんの見方はいないのだろう。
みんな響さんには声をかけていない。

小さな声で他の人も「ほんとラッキーだな。今の地位から引きずり落とされないように気をつけろよ。」と言って去っていった。

なんなの、この集まりは。
最低だわ。

こんな中にいつも響さんはいるの?

それでも笑顔で「肝に銘じます」と返している響さんを見ていると涙が浮かんできた。

私が言われたわけじゃないのに泣いてはいけない。
泣きたいのも辛いのも響さんなんだから。

私は席を立ち、トイレへと向かった。
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