冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる~愛なき契約夫婦の艶美な一夜~
コンコン…

誰?

私は返事できず泣き続けた。
止めることなんて出来ない。
響さんに会いたい。
謝りたい…ううん、謝ることはもちろん残りの4ヵ月弱きちんとやるから契約婚を継続させて欲しい。
響さんにだけは迷惑をかけたくない。
お金はどれだけかかっても返すから、結婚を今すぐ終わりにしないで1年の約束を果たさせて欲しい。これ以上彼の迷惑になりたくない。負担になるようなことをしたくない…。


コンコン…
「玲奈?入るよ」

響さん??

「玲奈…。」
部屋に入ってきてすぐに私を抱きしめてくれた。

「玲奈…大丈夫か?」

私の泣き顔をみて優しく頭を撫でてくれる。

「ひ、響さん。ごめんなさい…ごめんなさい…。」

「どうした?なんで謝るの?」

「わ、私…倒れてしまって。実は友達に翻訳をしないかと言われて…手伝っていたんです。それで…お小遣いまでもらってました…。そ、それが、最近忙しくて…。」

「で、倒れたんだな。」

「す、すみません。」
ベッドの上で正座になり頭を下げた。
まだヒックヒックとしながらも頭は上げられず、ベッドに擦り付けたまま。

するとそのまま抱え込むように私は響さんの腕の中に収まる。

耳元で響さんが優しく声をかけてくれる。
「家事も料理も手抜きしないから疲れたんだろう。少しくらい手を抜けばよかったのに。」

「わ、私は契約違反をしてしまいました。つい気楽なつもりで引き受けてしまったんです。仕事を辞めることが条件だったのに…響さんには救ってもらったご恩があるのに私は裏切るようなことをしてしまいました。なんと罵られても仕方がありません。申し訳ありませんでした。」

「玲奈…」

「お金は何年かかってもお返しします。でも…これ以上響さんにご迷惑をおかけすることはできません。お願いです。残り4カ月、妻の役目を果たさせていただけませんか?報酬もいらないです。」

「なぜ?」

「私は響さんに救われました。どん底から光が差してきたように思いました。そんな響さんを裏切るような行為をしてしまい反省しています。気軽な気持ちで仕事をしてはいけなかったのに私は契約を反故にしてしまいました。」

「そうか…。でも玲奈は妻を辞めたくないんだよな?」

「はい。1年の約束をしてたのに早くに離婚しては響さんに迷惑がかかります。なのでせめて響さんに迷惑をかけないようにさせてください。」

「それだけ?」

「?」

「それだけの理由で妻のままでいたいの?」

「はい!」

「そっか……」

響さんの表情から、どう思われているのか見当がつかない。
どうしたら響さんに迷惑をかけないんだろう…。
私の頭の中はいっぱいいっぱいで考えることができない。
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