冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる~愛なき契約夫婦の艶美な一夜~
ガチャリ

玄関の開く音が聞こえてきた。

振り返ると響さんが息を切らして玄関に立っていた。
玄関先で両親と鉢合わせした。

響さんは躊躇うことなく三和土で土下座していた。

「大変申し訳ありませんでした。」

「なんだ!君が相手なのか?なんてことだ。今更こんなことされて許せるわけないだろう。馬鹿にするのもいい加減にしなさい。私たちはもう玲奈とは縁を切った。金輪際会うこともない。勝手にしなさい。」

「お待ちください!どうか少しでいいです。話を聞いていただけませんか。」

「聞くつもりはない。」

そのまま両親は玄関を出て帰ってしまった。

響さんは立ち上がり、私の元へ駆け寄ってきてくれた。

「遅くなってごめんな。ご両親のこと、本当に申し訳なかった。」

「いえ…。元はと言えば私が決めたことです。響さんは悪くありません。私が…私が…」
嗚咽を漏らす私をギュッと抱きしめてくれる。
私も響さんの背中に手を回し、しがみついた。
泣き声を我慢できずに声を上げて泣いてしまった私を抱きしめ、背中をトントン、と叩いてくれた。

どれだけ泣いたのだろう。

やっと少し落ち着いてきて顔を上げた私を見て響さんはビックリしていた。

「玲奈、叩かれたのか?頬が赤い…。」

あ…

何も言わない私に響さんは無言で理解したようで、私をソファに座らせた後冷たく冷やしたタオルを持ってきてくれた。
響さんがタオルで冷やしてくれながら話を始めた。

「ご両親は気が付いたんだね。戸籍から?」

「はい。戸籍から私が抜けていることに気がつき上京したら家もなかったと電話が来ました。どう言うことか、と捲し立てられて何て説明したらいいかわからなくなってしまって…。それで説明出来なかったらそれを怒って絶縁だと言われました。うちの両親は前にも話しましたがとても堅い人たちなんです。石橋は必ず叩いて渡るって言うくらいに慎重なんです。だからこんなことすることが信じられないんだと思います。」

「そうか。スペインから帰ってすぐに挨拶に行けばよかったな。いや、そもそも結婚するときに1年の契約とはいえ挨拶に行くのが筋だったな。でももう今更だ。ここからどうするか、だ。」

「もうあんなに怒った両親は見た事ありません。無理です…。」

また私は涙がこぼれ落ちてきた。「玲奈、改めて週末に実家へ伺おう。何度でも説明しよう。君を不幸にしたくない。もちろんご両親にとっても大切な娘さんだ。それを勘当するだなんて悲しいことにはさせない。俺は親から見放されていたからわかる…。本当に悲しいことだからそんな目に合わせられない。」

「響さん…。」

「玲奈。大丈夫。」

うん…
本当に大丈夫かは分からない。
でも響さんの力強い言葉に導かれていた。
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