冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる~愛なき契約夫婦の艶美な一夜~
週末の土曜日、私たちは飛行機に乗り、タクシーで実家へ向かった。

電話にも出てくれないため2人で突撃する形になった。

のどかな風景は私が家を出た頃と全く変わらない。

ピンポン…

はーい、と中から母の明るい声が聞こえてきた。

でもインターホンに私が映った途端、父が帰れと言い切られてしまった。

お父さん…

もう一度インターホンを鳴らす。

ピンポン…

もう出てもくれない。
こうなることは予想ができた。
多分もう話してはくれないだろうと思っていた。
響さんは手紙を書いてきており、名刺とそこにプライベートな番号を書き入れポストに入れた。

私たちはまたタクシーが拾える大通りまで出てからホテルへ向かった。

今日はここに2人で泊まる予定。

もし手紙を読んでくれたら電話をくれるかもしれない…
もしかしたら明日は会ってくれるかもしれない…
そんな僅かな望みにかけるように私たちは市内のホテルに泊まることを決めてきていた。

「玲奈。ご飯は食べないとダメだ。お腹が満たされないと気持ちも不安定になる。まずは腹ごしらえとはよく言ったもんだよ。」

「はい…でも…食欲がわかなくて。あれからどうしようとばかり考えると胃がムカムカして…食べても消化されないって感じで。ゼリー飲料で補充してるから大丈夫です。」

「他に食べたいものはないか?少し痩せたぞ。何か力になるものを食べて欲しい。食べたいものがあれば買ってくるから。」

「ありがとうございます。じゃ、まりもプリンが食べたいです。後で食べに連れて行ってください。」

「まりも?!わかった。後でお店をフロントで聞いてくるよ。さ、それまで少し横になるんだ。顔色も良くない。」

響さんは私をベッドへ誘導した。
自分はベッドサイドへ腰掛けて私の頭を撫でる。
小さな声で、
「大丈夫…大丈夫…」
と繰り返す。
その声を聞いていると安心して眠くなってきた。
瞼が落ちてくる。
すると瞼にキスが落ちてきて「愛してる」と囁かれたところで記憶がなくなった。
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