冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる~愛なき契約夫婦の艶美な一夜~
翌朝、また実家へタクシーで行くが昨日と同じようにインターホン越しに帰れと言われ切られてしまった。
付け入る隙間もなく即座に切られてしまい私たちは仕方なく東京へもどった。

私は精神的に不安定で翻訳の仕事にも身が入らず千波には申し訳ないが少し休ませてもらうようにお願いした。

千波も訳を聞き少し休むといいと言ってくれ助かった。

私は家に閉じこもるようになった。
家事は最低限するが食事を作ろうとすると気持ちが悪くなり作れない。食べたくもない。

私の様子を心配した響さんは病院に行こうというが行く元気もなくなってきた。

次の週末、また釧路へ向かった。
また実家へタクシーで向かうがインターホンに出てくれることさえなかった。
窓は開いており在宅しているのはわかっているのに…。
響さんはまた手紙をポストに入れ私たちはホテルへ戻った。
忙しい響さんを毎週ここに来させるわけにはいかない。
今週を最後にしようと私は決めていた。

少し痩せた私を心配して食事を勧めるが固形物を受け付けない。
ゼリー飲料だけ口にして、響さんに促されベッドで横になった。

「ごめんな。こんな辛い目に合わせて。絶対にご両親の仲直りさせてあげるから。」

「いいんです、もう。私のせいなんですから。」

「そんなことない。俺の配慮が足りなかった。」

「いえ。でも今こうして響さんといられることが幸せなんです。だから今の幸せを壊したくない。」

「壊れる訳ないだろう。玲奈を絶対に離さない。」

「ふふ…ありがとうございます。」

「さぁ、また少し休もう。」

響さんの手は優しく私の瞼を下ろすように何度も何度も撫でてくれた。
私は響さんが隣にいてくれることが安心で、彼の手が心地よくて眠ってしまった。
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