冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる~愛なき契約夫婦の艶美な一夜~
響さんに連れられてお寿司屋に行った。

海鮮丼、と思ったけど響さんに連れられカウンターに座る。

釧路に住んでいたけれどこんな贅沢なお寿司屋さんに入るのは初めてだった。

「何にする?」

「え?!何に…。すみません。少ししか食べれなくて。今の旬のものを少しお願いできますか?」

「はいよ!」

「大将、すみません。彼女少食で。俺は普通にお任せで。」

「はいよ。」

私たちの前には白身魚から並べ始めた。
久しぶりに食べる新鮮そのもののお寿司は食欲がなかったはずの私の胃袋に吸い込まれるように入っていった。
久しぶりにお腹いっぱいになった。
それでも響さんの半分くらいだったけど。

お腹いっぱいになった私たちは2人で海辺を散歩した。
ただの漁港だけど私にとっては馴染みの景色。
もう見れないのかもなぁって思いながら歩いた。

「何もないでしょう…でもそれがいいんです。東京とは違うけど温かくて人情味があって。ビルもマンションもあんなに大きなものはないけど、でもだからこそ空が広いんです。海が近いし、酪農も盛んだし、食べ物が美味しいんです。」

私は話していて涙声になってきてしまった。

「そうだな。ここはいいところだな。俺も好きだよ。」

「ありがとうございます。響さんとここにこれてよかったです。」

「明日また実家へ行こうな。諦めちゃダメだ。」

「もういいんです。もう…。またいつか、両親に会いに来ます。今はこんなに怒っているから話を聞いてもらえないと思います。また、またいつか…。」

「そんなこと言うな。」

「もういいんです。何度もありがとうございました。」

「ダメだ。」

「明日、明日行ってダメならもうやめましょう。響さんに負担をかけてることが苦しいんです。両親への気持ちもありますけど、今の私には響さんしかいないんです。その響さんに負担をかけてることが心苦しくて、重荷になってるんです。もうやめてください。」

「玲奈。大事なことなんだよ。諦めたらダメだ。俺は何度でも来るよ。許してもらえるよう努力したいんだ。親から祝福されない結婚なんてしちゃダメだったんた。そんな不幸な花嫁にしてしまったことをどんなに悔いても悔やみきれないんだ。」

「でも響さんにはもう私のために頑張らないで欲しいんです。」

「頑張りたいんだ!もう少しだけ頑張らせてくれ。」

私は言い合いをしているとフラッと立ちくらみがした。

膝から落ちそうになったところを響さんに掬われるように抱えられた。

「大丈夫か?玲奈、東京に明日戻ったら月曜に病院に行こう。」

「大丈夫です。ちょっとした立ちくらみですから。貧血なのかなぁ。」

「貧血かどうかも調べよう。とにかく病院だ!」

私に有無を言わせないような雰囲気で押し切られてしまった。

私を抱えるようにホテルへと戻った。
< 171 / 205 >

この作品をシェア

pagetop