冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる~愛なき契約夫婦の艶美な一夜~
「響はもともと弓川コーポレーションの跡取りではなかったんだ。響は次男で、兄貴がいたからその兄貴が跡を継ぐ予定だった。とても仲のいい兄弟でさ。兄貴の後をついて回る響を小さな頃からよく面倒見てたよ。」

「…」

「俺は兄貴の友達だった。響の兄のために弓川コーポレーションに入り、あいつの秘書になるべく勉強もしてきた。」

私はこの話の結末がわからない。
ただ、とても大切な話なんだということはわかる。
口を挟むことなく米山さんの話に聞き入る。

「響も兄貴のために働くつもりで弓川コーポレーションに入ってきたんだ。下からの叩き上げで営業とか経理とかいろんなところを回ってきたんだ。あいつはおとなしいがとてつもなく努力家だ。コツコツと積み重ねていくんだ。仕事だけでなく信用もついてきていた。あいつが副社長になって、社長になる兄貴を支えるつもりだった。」

「…」

「それが…兄貴が山で遭難しちまったんだ。2人で登るはずだったけど響が前日に足を捻って登れなくなってさ。でもあいつは山登りに慣れてるからって一人で行ったんだ。行くのをやめなかったんだ。」

「えぇ…そんな。」

「1泊の予定が帰ってこなくてさ。連絡も取れずに捜索隊が出たんだ…それでも発見されなくてさ。結局1週間後に滑落したみたいで崖の下で見つかった。」

「…」
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