冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる~愛なき契約夫婦の艶美な一夜~
夕飯はお母さんがたくさんの料理を並べてくれた。
初めてお会いする弟くんも駆けつけてくれとても賑やかな夕飯になった。

弟の新(あらた)くんは札幌の大学に通っており卒業後は東京に出たいと考えているそうだ。

そのため東京での生活や仕事の状況など俺にたくさんの質問をぶつけてきた。
さすが就活生。
俺としても生の学生の声が聞こえてきて参考になる。

「弓川さんは弓川コーポレーションの副社長なんですよね?凄いですね。そんな大きな会社の副社長だなんて信じられないな。」

「ちょっと、新!失礼だよ。」
玲奈は注意するが、
「いや、別にいいんだ。俺の弟になるんだし。新くん、俺はよくいう御曹司って感じじゃないかもな。家政婦に育てられたから感覚は庶民だよ。お小遣いも3年生で300円とか6年生で600円とかしか貰えなくて駄菓子屋にも良く行ってたよ。学生の頃はいろんなところに旅行して回ってたんだ。バイトでお金貯めたけど凄い貧乏旅行だったんだ。でもいい思い出だよ。俺は君の思うような御曹司じゃないかもな。ごめんな…期待外れでさ。」

「いや、気さくで驚いたんです。御曹司なんて何を話したらいいのか分からないと思ってて。しかもねーちゃんを嫁にもらうなんて変わってんなーって思って。」

「ちょっと!響さんに失礼だよ!私にもかなり失礼!」

「いやー、ねーちゃんは結婚しないと思ってたからさ。まさかねぇ…。」

「玲奈に選んでもらえて良かったよ。」

「「「え?!」」」

みんなでその反応に驚く。
うちの家族みんな私が見染められたと思ってる。
でも響さんのこのセリフに家族みんなすごい反応だった。

「ねーちゃんが選ぶ側かよ!信じらんないな。うわぁ。人生でいちばん驚いた。イケメンで御曹司が庶民に選んでもらえて喜んでるなんてどんだけなんだよ。」

お父さんもお母さんも何も言わないが、さっきの「え?」が素直な反応だろう。

「玲奈が結婚してくれて、妊娠までしてくれて俺は幸せ者なんだよ。」

「はぁ…。弓川さん変わってるわ。」

「あーらーたー」

「ごめん、ごめん。まさかそんなにねーちゃんのことが好きだなんてさ。なんか親近感湧いたわ。御曹司って感じじゃなくて安心したし。」

みんなでワイワイと楽しい夕食になり久しぶりにたくさん笑った。
家族ってこういうもんだよな。
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