冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる~愛なき契約夫婦の艶美な一夜~
「響はなぜ一緒に行かなかったのか悔やんでいたよ。それにどうして行くのを止められなかったのか、と。悔やんでも悔やみきれない、と自分のせいにばかりしていた。それに、親の期待を背負っていた兄を失い、両親はお門違いなのに響に当たってきたんだ。響のせいだと言ってきた。」

「そんな…」

「響は受け止めたよ。理不尽なのかもしれないけれど響も自分のせいなんじゃ、と思いこんでいた。そんなはずはないのに。」

「…」

「両親の絶望は計り知れないものだったよ。兄貴が優秀だったから余計に…。でも響だって同等に優秀だ。なのに両親はいつでも二番手扱い。ただ、いつまでも絶望に浸っているわけにもいかなくなった。時期社長が亡くなり、会社が不安定になったんだ。株価も下落した。慌てた両親は響を副社長に担ぎ上げたんだ。」

「そんな…」

「響はもともと叩き上げで色々な部署を回ってきたし、人望も厚かった。だから社内での反発もなく就任することができたよ。今も円滑だと言える。ただ、響の心の中まではわからない。俺は兄貴の秘書になるため勉強してきたつもりだが、今の響を見て、こいつを支えたいと思った。」

「そうだったんですね…。」

「響は副社長としてよくやってるよ。ただ、周りがもともと兄貴に結婚を推し進めていたんだ。政略結婚を…。で、押し切られてするはずだったのが6月18日。」

「でもそれはお兄さんの結婚式ですよね?」

「その通り。周りは何を考えているのか兄貴は亡くなったのに相手はそのままで響に変更すると言うんだ。そりゃあないだろう…。」

「ありえないですよ。そもそも政略結婚も信じられないけれど。」

「だよな。今時無いよなぁ。弓川コーポレーションは別に困らないんだ。けど…相手の会社が困るんだよ。相手は弓川と親戚になることで大きな利益を生むから。だから兄貴がダメなら弟でも、と思ってるんだ。胸糞悪いが。」

「ひどい…お兄さんにも響さんにもひどいじゃないですか。相手はだれでもいいなんて…。」

「でも、一度は受けたもらった結婚の話。相手としては引き下がれないんだよ。会社が絡んでいるし繋がりたいんだ。だから響は婚姻関係がなくとも支援すると言ったんだ。なのに相手は今後のための保険として姻戚関係を結びたいらしいんだ。」

「そんな提案されても尚、姻戚関係を結ぶ?ひどい…」

「日にちはもう押さえてあるんだ。響には別の相手が元々いたから無理ってことにしたいんだ。もうしがらみはなくしたいんだ。だから君に響の相手になって欲しいんだ。」

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