冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる~愛なき契約夫婦の艶美な一夜~
玲奈の痛がる声や呻くような声が充満する分娩室。

モニターからドクドクと聞こえる心音。

俺にとっても玲奈にとっても時間が永遠のように感じた。

「さぁ、頭が見えてきましたよ。」

え?!

「あと一踏ん張り!次の波が来たら出してあげましょうね!お母さん!次は深く息を吸ったら長くいきんでね。波が来たかなー。」

「はい!」

玲奈は深く息を吸い込み、これでもかと言わんばかりにグッといきむ。
俺の手を握る力が強く玲奈のいきみが伝わってくる。
周りにいたスタッフもバタバタし始めた。

うんぎゃあ、うんぎゃあ…

「はい!おめでとうございます。可愛い男の子よ。」

はぁ、はぁ…玲奈は呼吸が上がっている。

俺はまだ血だらけの赤ちゃんが玲奈から出てくるところを目の当たりにした。

赤ちゃんってこんなに大変な思いをして出てくるんだな。
そう思ったら涙が止まらなくなった…。

「響さん?」

「ごめん、玲奈。産んでくれてありがとう。俺…なんて言ったらいいか。」

涙がとめどなく流れ恥ずかしいが感動して止まらない。

「ありがとう…ありがとう…」

「響さん男の子でしたね。元気な声で安心しましたね。響さんはもうパパですよ。」

「あぁ……。」

「さぁ、弓川さん。赤ちゃんが胸元にいきますよ。」

そういうと助産師さんは玲奈の胸に赤ちゃんを向かい合うようにのせてくれた。

「可愛いですね…」
玲奈も赤ちゃんを見て涙ぐむ。

「あぁ、本当に可愛いな。なんて可愛いんだろう。」

玲奈の胸元で、ふぇ、ふぇ…と小さなこえでしゃくりあげている。

助産師に促され赤ちゃんの口におっぱいを近づけると自然と吸っている。

何で可愛いんだろう…。

あ!写真!!!
なんてことだ。
忘れるなんて。
いや、カメラは東京じゃないか。
俺は慌てすぎてスマホと財布しか持たずに来てしまった。

とにかくあわててスマホで写真を撮り始めた。
周りのスタッフが「初めての家族写真を撮りましょう」と言ってくれ写真を撮ってくれた。

「ありがとうございます。ありがとうございます。」

俺は何度もお礼を言った。

部屋に戻るのはもう少し、と言われたので俺は玲奈の両親に伝えるべく一度病室へ戻った。
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