冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる~愛なき契約夫婦の艶美な一夜~
「あ、そういえばお父さん…。知らせたんだけど空港にいないから置いてきたの。どうしたかしら?」

「はぁ?」

「なんか喜んでるみたいだった…かしら。よく分からないわ。私も自分のことで精一杯で。」

「なんだそれ…。」

すると母さんのスマホがなっていることに気がついた。
出ようとすると切れていた。
見ると着信145件になっている。
電話が鳴りすぎて携帯の電池が切れそうだった。
また着信があり母さんが出ると、
「バカもん!今どこにいるんだ!」

「北海道よ。」

「北海道のどこだ!お前はどこにいくのが言わず羽田に行くしか言わなかっただろう。俺はどこ行きに乗ればいいんだ!バカもん。」

「バカバカ言わないで!全くもう。」 
その瞬間母の携帯の電池が切れた。

「あら…残念。電池切れ。」

俺も玲奈も呆気に取られた。
しかも肝心な場所はまた言っていなかった。
また北海道しか言ってなかった。
徐々に笑いが込み上げてきた。

「ククク…。母さん、そりゃないよ。また北海道しか言えてなかったよ。」

「あらぁ。残念。」

「いやいや、残念…でいいのか。」

「あとで充電器買ったらかけるわよ。あんなに着信鳴らさなかったら私の携帯の電池減らなかったのにねぇ…。おバカですねぇ、ジィジは。」

俺も玲奈も笑い声をあげた。
こんなにもマイペースな人だったんだな。

「母さん、俺が電話してみるよ。」

「あらそう?」

俺は父さんの携帯に電話をするとワンコールも鳴らずにすぐに出た。

「今どこだー!」

「父さん?響だけど…。今、釧路だよ。東部総合病院っていうところにいるんだ。今さっき母さんも到着したよ。」

「わかった!今すぐ行く!!!」
ガチャ。

え?切れちゃった??

夫婦揃って電話を切るって。
似たもの夫婦なのかもしれないな。
そう思っているとすぐに電話が鳴った。

「くそっ!最終便が今さっき飛び立ったそうだ。くそっ!俺は明日の朝、始発で行く!」

「父さん。慌てないで、気をつけてきて。」

「全く…母さんだけ先に行きやがって。」

「始発できても面会時間じゃないから無理だよ。母さんにホテルを取るから明日合流したらいいよ。」

「わかった!母さんの電源入れとくように言ってくれ!」
ガチャ。

また切れた…。

俺は苦笑しながら、
「最終便に乗れなかったと怒ってる。」

「あらあら。」

「母さんはホテルとるからそこで明日父さんと合流して。」

「わかったわ。響はどうするの?」

「玲奈の実家に泊まらせていただくよ。」

「あらいやだ。私ったらご挨拶もしてなくて、挙句手土産の一つも持たずに来ちゃったわ。玲奈さんのご両親に失礼なことばかりして…ごめんなさい。玲奈さん。気が利かなくて。」

「いいんです。お気になさらないでください。今日来ていただけただけで嬉しいですから。」

「ありがとう。でもそういうわけにもいかないわ。響、携帯貸して!」

「いいけど…」

俺が手渡すと父さんに電話をかけ、
「あなた、私ったら玲奈さんのご両親にご挨拶の品も手土産もないままにこっちに来ちゃったの。今からデパート行って買ってきてちょうだい。沢山よ!」
ガチャ。

また切ったよ…

今初めて見る俺の両親の姿に人間味を感じ、笑ってしまった。
< 202 / 205 >

この作品をシェア

pagetop