冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる~愛なき契約夫婦の艶美な一夜~
「ありがとう。挨拶しにきてくれると思わなかったよ。」

「いえ。」

神山さんは、
「おい、また険悪だったなぁ…。」

「いつものことだよ。」

2人は歩きながらいつものことだと言いながら話している。

私は2人の後をトボトボと付いて歩く。



「おい!花嫁を置いてけぼりにするな!」
と後ろから声が聞こえてきた。

米山さんが声をかけたようだ。

「これじゃ、バレるぞ」
と小さな声で注意する。

響さんは私の隣に並び腰に手を当てる。

「さぁ、ドレスを脱ぎに行こう。申し訳ないがこのままホテルに泊まってもらう。プレジデントスイートだから部屋は分かれてる。別々に休めるから気を遣わなくていい。」

「はい…」

私は控室へ送られ、朝着てきたものを着ようとしたが洋服がなくなっていた。
代わりに素敵な淡いサーモンピンクのワンピースとゴールドがあしらわれたパンプスが置かれていた。

ありがたく着させてもらい、部屋を出た。
廊下で響さんが待っており私をつれて最上階のラウンジへと向かう。

仲の良さをアピールするためなのかまた腰に手を当て私をエスコートする。

「疲れただろう。食事がちゃんと取れなかっただろ。ここで食べたらいい。」

「はい。ありがとうございます。」

ごめん、と小さな声でいい私の隣に移動してきた。
ソファ席のため密着する。
私が驚いて固まっていると「披露宴にいた人達がいるんだ。」と小声で説明した。
響さんは私の肩を引き寄せさらに密着してきた。
「あいつらには聞こえないようにしよう。ごめんな、これからこんなことが続くんだ。大丈夫か?」
「もちろんです。」
と私も小声で答えた。

見かけた人たちも流石にラブラブに見える私たちに声をかけることなく去って行った。

こういうこと一つ一つの積み重ねが大事なんだろう。

私たちはこのまま隣同士で食事を取り、エスコートされるようにスイートルームに向かった。


初めてのスイートルームに興奮気味。
私はウロウロと部屋を回る。
テレビの中の世界みたい…。
私が散策してる間、響さんは来慣れているからなのかリビングにドスンと腰掛けていた。

「響さん、お湯張りましょうか。お疲れでしょう。」

「いや、俺はゲストルームでシャワー浴びるから気にしないで。君はマスタールームでゆっくり浸かってきてくれ。」

「ありがとうございます。」

私は素直に受け入れマスタールームを見に行く。

まさかのバラが準備されており、バラ風呂にできるってこと?!

何もかもテレビの世界。
こんな世界があるのね…。

式当日だからホテル側からのお祝いなんだろう。
弓川コーポレーションの御子息の結婚だもの。

こんなことをしてもらえるなんてすごいと思う。
けど、こんなことをしてもらえるにはそれなりの努力や実力、お互いの利益などが見え隠れしているんだろう。

御曹司も大変だなぁ。

私はありがたく初めてのバラのお風呂に入り、満喫させていただき、そのままマスタールームで就寝した。

部屋に帰ってから響さんとは何も会話することはなかった。
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