冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる~愛なき契約夫婦の艶美な一夜~
店長さんに勧められ何着も試着した。

その度にご主人に見せてあげてくださいと言われ、カーテンを開けられてしまう。

まるでファッションショーのよう。

男の人は女の人の服なんて興味ないし、早く終わらせてよ、と言うのが常だと思っていたが響さんは違うみたい。
あれこれ相談にのってくれる。

結局カットソー3枚、パンツ1本、スカート1枚、ワンピース1枚、パンプスにバッグまで購入した。

私の人生でこんなに買ったのは初めて。
ましてやこんな高級店でだなんて3ヶ月前の私は想像すらつかなかった。

響さんはパンツだけ試着したが長さは全く問題ない。裾直しの必要はなく、足の長さを感じさせられた。

あっという間に響さんの買い物は終わった。

たくさんの荷物をショッピングバッグに入れてもらった。
いつもなら配送してもらうようだが今日は大丈夫、と答え響さんが全て受け取った。

私が「少し待ちます」と小声で言っても知らんふり。

店員の皆さんに見送られ、私たちは店を後にした。

「玲奈、荷物を車に置いてきていい?」

「もちろんですよ!持ちますってば。」

「まさか!荷物を持つのは男の仕事だよ。」

「悪いです…。私も持ちます。そもそもどうしてこんなに買ったんですか?私には贅沢すぎて。」

「気に入らなかった?」

「とても素敵でした。でも分不相応です。」

「大丈夫。似合ってたし。俺が妻にあげたかったんだ。妻に、ね。」

そっか。 
これも契約妻の仕事の一環なのね。

それにしても高額な報酬になってしまうことに私は申し訳なくて仕方ない。

「玲奈。これは必要経費。気にせずどんどん着て欲しい。」

「わかりました。響さんの妻としてみすぼらしい格好をしないよう心がけます。」

「いや…そう言うことじゃないんだよなぁ。」

「え?」

「ま、いいや。とにかくどんどん使ったね。可愛かったからさ。」

私は言われ慣れないセリフにまた顔が火照るのがわかった。
< 58 / 205 >

この作品をシェア

pagetop