冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる～愛なき契約夫婦の艶美な一夜～

パッパー…

勢いよくクラクションが鳴らされる。

音にびっくりするが咄嗟に体が動かない。

あ、轢かれちゃう…

もうダメ、グッと目を瞑った。

するとグイッと腰から抱えられ歩道に戻された。

「何やってるんだ！！！」
大声で怒鳴られた。

「…す、すみません。考え事していたらぼーっとしてしまって…。」
ガタガタ震える私を見てその人は驚いている。

「死にたいのか？」

「そんなわけないです！し、し、死にたくなんかない…」

「ならどうして道路に出たんだ！」

「だから考え事していたらぼーっとしてしまって。足がもつれちゃったんです。」

ガタガタガタ…
震えが止まらない。

本当にもうダメだと思った。

助かったことに安心したのか涙が溢れてきた。

生きててよかった。

まだ死にたくなんてない。

震えが止まらずとうとう座り込んでしまった。

泣きながら道路に座り込んでる私を遠巻きにいろんな人が見てくる。

助けてくれた人は私を怒鳴ったことで気まずいのかその場から離れられずにいた。

私はもう立ち上がりたくても腰が抜けてしまい動けない。

「あ、あ、ありがとうございました…」
なんとかふり絞るようにお礼を伝えた。

「あ、あぁ。」

その人は立ち去らない。

私の涙は止まることなく流れ続ける。
周りの目なんか気にならない。

この涙は助かったことの涙だけではなく、悠真の借金を背負わされたことのショックもあり、やっと泣けた涙も混ざっていた。

その人は私の前に座り込みみんなから顔を見られないようにしてくれているようだ。

でも私にはもう涙を止める術が思いつかない…

止めどなく流れる涙に…さらには嗚咽まで漏れてきた。

「ごめん、強く言い過ぎた…。」

「ち、違うんです…あな、あなたのせいじゃなくて…ヒクッ」

「立てるか？」

「ご、ごめんなさい。無理です。どうぞ放っておいてください。」

「そんなことできるわけないだろう。」

「大丈夫ですから…」

なんとかその人に立ち去ってもらうように声をかけるが動かない。

あろうことかその人は私を抱きかかえ歩き始めた。