冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる~愛なき契約夫婦の艶美な一夜~
ふと米山さんと響さんが私から離れたタイミングで柳瀬夫妻が私に近寄ってきた。

「ご無沙汰してますな。副社長と上手くやってるんですか。どうやって取り入って妻になったんだか…。どこの馬の骨かもしれない女を捕まえてくるなんて副社長もどうにかしてるな。みんなそう思ってますよ。ご自身の身の振り方をお考えになった方がいい。周りを見てごらんなさい。あなたをどんな目で見ているか。うちの娘なら見た目も品位も教養も文句のつけどころがないのに。」
言いたいことだけ言うとすぐに私から離れた。

米山さんや響さんがいつ戻ってくるかもしれないか分からないのでこの前の様にならない様に考えているんだろう。
堂々としていないところがまたいやらしい。

私はため息が漏れた。
あの人たちに言われなくとも私が釣り合わないのなんて百も承知。
契約だから妻してるだけだし…。

でも…目の前ではっきり言われると辛い。
わかっているけど他人から評価を口にされると辛い。
目の端に涙が浮かんできた。
私はトイレへ逃げ込む様に向かった。

その姿をまた柳瀬夫妻は楽しそうに笑っているのが目の端に入ってきた。

なんて陰湿なんだろう。
人を傷つけておいて、笑ってる…。

言い返せない私はその場から離れることしかできない。

柳瀬夫妻は間違ってない。
私は拾われてきた雇われ妻で、見た目も教養もない。
自己嫌悪に陥って個室で涙が止まるのを待つ。

ふぅ〜…
握りしめていた手が真っ赤になっている。
個室を出て鏡を見ると目が赤い。
目の周りの化粧も崩れている。
私はバッグに入っているファンデーションで少し直し、なんとか外に出られるくらいにはなった…かなと思う。

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