遅咲きの恋の花は深い愛に溺れる
***

佐伯秀人は細身のスーツにフレームのない眼鏡をかけた目を惹くような綺麗な顔立ちをしている。

だが決して愛想はよくない。
いつでもクールな出で立ちである。
けれど物腰は柔らかく低姿勢で、声色も柔らかく優しい。愛想の割には相手に好印象を与えるので周りからの信頼は厚い。

システム部門の元チーム長である林部が集合をかけ、チーム員が林部の元に集まった。

「今年度から新しくグループ長になった佐伯くんだ。後の事は佐伯くんに任せて定年までの半年はゆっくりさせてもらうよ~」

林部は冗談を言いながらにこやかに新しいチーム長、佐伯秀人を紹介した。

「じゃ、佐伯くんからも一言どうぞ」

「はい」

一歩前に出た佐伯を見て和花はあっと息を飲んだ。

(あの時の王子様だ……!)

エレベーターで気分が悪くなり過呼吸で倒れこんだ和花を助けてくれた男性。今まで見たこともなかった人だったのできっとこれからも関わりがないと思っていた通りすがりの王子様。

その男性が今目の前にいる。

「この度チーム長を拝命しました佐伯です……」

ドキドキと鼓動が早くなる。
秀人の挨拶など耳に入らないくらいに和花は驚きを隠せなかった。
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