遅咲きの恋の花は深い愛に溺れる

「私はね、橘さんが心配だよ。いつも一生懸命で頑張っている。でも頑張りすぎているところもあるんだなぁ。娘を見る気持ちで接していたけど、あまりあれこれ言うのもセクハラになっては困るからね。難しい世の中だねぇ」

「確かに、聞きづらいことですね」

「佐伯くんもちょっと気をつけて見てやってくれないかな?」

「はい、できる限り配慮はします。もしかしたら何か抱えているかもしれませんね」

「管理職ってのは大変だよねぇ。私はあと半年でゆっくりさせてもらうけどねぇ」

林部は柔らかく笑いながらビールを煽った。

林部の仕事のやり方だけでなく人を慮るところ、そういう面に胸を打たれて秀人は林部からのオファーを受けた。同じ管理職になるならば林部のような存在になりたいと秀人は思う。

秀人はテーブルの端にちょこんと座る和花を見る。女性社員、棚橋小百合と隣同士和気あいあいと食事をしている。その姿は至って普通だ。

そんな彼女に何があるというのか。
何を抱えているのだろうか。
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