遅咲きの恋の花は深い愛に溺れる
秀人は自然と階段の外側に位置し和花を内側に寄せる。蛍光灯の少ない薄暗い階段に、二人の靴音が響いた。
「行きも階段で?」
「いえ、行きは小百合さんと一緒にエレベーターできました。乗れなくはないんです。だいぶ克服はしましたし。ただ男性と二人きりのエレベーターが怖くて」
「そうですか、無理しなくていいと思いますよ。それに階段の方が健康的でいいですよね」
「でもこの階段はさすがに暗かったですよね。すみません付き合わせてしまって」
「構いませんよ。橘さんが一人でいる方が心配になります」
例え秀人の言葉が社交辞令だとしても、和花は心がほんのり暖かくなるようで胸がきゅんとする。秀人という”男性と二人きり”だというのに、まったく怖くないのはなぜだろうか。
(林部さんに似てるのかな?)
そんな風に思ってみるも、秀人の横顔は林部とは全く違う。ニコニコと人のいいおじさんタイプの林部に対して、秀人は鼻筋が通っていて意思の強そうな瞳に引き締まった口元。整った顔に林部の要素など一つもない。
当たり前なのにそんなことを確認してしまった自分に笑いが込み上げてきて、和花は一人静かに微笑んだ。
「行きも階段で?」
「いえ、行きは小百合さんと一緒にエレベーターできました。乗れなくはないんです。だいぶ克服はしましたし。ただ男性と二人きりのエレベーターが怖くて」
「そうですか、無理しなくていいと思いますよ。それに階段の方が健康的でいいですよね」
「でもこの階段はさすがに暗かったですよね。すみません付き合わせてしまって」
「構いませんよ。橘さんが一人でいる方が心配になります」
例え秀人の言葉が社交辞令だとしても、和花は心がほんのり暖かくなるようで胸がきゅんとする。秀人という”男性と二人きり”だというのに、まったく怖くないのはなぜだろうか。
(林部さんに似てるのかな?)
そんな風に思ってみるも、秀人の横顔は林部とは全く違う。ニコニコと人のいいおじさんタイプの林部に対して、秀人は鼻筋が通っていて意思の強そうな瞳に引き締まった口元。整った顔に林部の要素など一つもない。
当たり前なのにそんなことを確認してしまった自分に笑いが込み上げてきて、和花は一人静かに微笑んだ。