遅咲きの恋の花は深い愛に溺れる
受付を済ますと秀人はいろいろな方面から声をかけられた。久しぶりに会う同期や別部署の同僚など、様々だ。

(さすが佐伯さん顔が広い……)

和花は傍らで感心しつつ、自分がいては迷惑かとそっとその場を離れた。

立食パーティー形式で、部屋のまわりには椅子が並べて置かれている。会社で見たことがある人がちらほらいるものの、完全なる知り合いは秀人以外いなさそうだ。

和花は邪魔にならないように隅の方へ一人座った。

暫くするとほのかに照明が落とされパーティーが始まった。なぎさは色打掛に身を包み華やかで綺麗だ。普段明るく賑やかしいなぎさも、今日ばかりはとてもおしとやかに大人っぽく見え、和花はほうっとため息をついた。

二人の馴れ初めのスライドを見ながら羨ましくも幸せな気分になる。自分もいつかこんな素敵な結婚をしたいと、和花は想いを馳せた。

食事が運ばれてくるとブッフェ形式なだけあり、わっと人が群がる。その波を見て和花は踏み出した足を遠慮がちに止めた。

(少し捌けてから取りに行こうかな)

そう思って大人しく座っていると、ふいに「一人?」と声をかけられ和花はそちらを見る。

「え、は、はい」

「何か食べないの?」

「い、いえ」

見たことがない人だ。
新郎側の会社の人だろうか。
優しそうな笑みを浮かべている。

「なぎさちゃんの会社の子だよね?可愛い子ばかりでびっくりしたよ。よかったら一緒にどう?」

「あ、あの……」

声をかけられるのは不本意ではない。
だが、ふいになぎさの言葉が頭を過っていく。

──和花ちゃんさぁ、もう少し男性に興味持ちなよ

確かにそうだと思う。
なぎさの言うことは最もだ。
いつまでも男性が苦手だなんだのと理由をつけて避けていては何も始まらない。こういう出会いこそ大事にしていかないと、自分はいつまで経っても前へ進めないのだ。

和花はぎゅっと胸を押さえた。
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