遅咲きの恋の花は深い愛に溺れる
「今度また行くから、会えるの楽しみにしてるね。そういえばこの前駅の近くで見かけたけど、家はすぐ近くなの？」

和花は思わず受話器を落としそうになった。何を見られていたのだろうか、これ以上三井に何かを知られるのなんてごめんだ。
和花は気を強く持ち直し、一息で言う。

「いえ、あの。ご用件は？」

「ああ、そうだった。橘さんと話すのが楽しくてさ、佐伯チーム長いる？」

馴れ馴れしく話す三井に和花は不快な気持ちになっていく。いつ自分は三井と仲の良い関係になったのだろう。和花にはまったく覚えのないことだ。一度だって気を許した覚えはない。

「し、少々お待ち下さい。……佐伯さん、あの、HOKUTOシステムの方からお電話です」

思わぬ声が震えてしまった気がしたが何でもない素振りをする。なのに秀人は和花のそんな些細な反応に眉を寄せた。

「橘さん、どうかしましたか？」

「いえ、お電話をお回しします」

和花は転送ボタンを押してから秀人の内線番号をゆっくりと押していく。指先はわずかに震えてしまったが何とか電話を回すことができてほっとした。


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