遅咲きの恋の花は深い愛に溺れる
「すごい、こんなにいっぱい……」

一度には食べきれない程の牛肉を手にしたのは初めてだ。和花はどんな料理を作ろうかとインターネットでレシピを検索し始めた。

「あっ!そうだ」

ふと閃き、和花はふふふと微笑む。

「佐伯さん、誘おうかな」

こんな風に積極的に考えられる自分も久しぶりな気がした。和花は今、自分が前向きに進んでいることを改めて実感する。

和花は秀人に電話をかける。
数回のコール音ののち、「はい」と柔らかい声が耳に届いた。秀人の声は低くて男らしい声なのにいつだっておっとりとしていて、和花を安心させる。

「佐伯さん、すき焼きしませんか?」

「すき焼き?」

「はい、ビンゴで当たったお肉が届いたんです。一緒にどうかなって思って」

「橘さんの家にお邪魔していいの?」

「もちろんです!」

とは言ったものの、男性を家に呼ぶのは初めてだ。和花は社会人になってからもしばらくは実家から通っていたが、去年から会社の近くで一人暮らしを始めた。いい加減自立しようと始めた、和花にとっては大きな一歩だった。

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