遅咲きの恋の花は深い愛に溺れる
「わかりやすいなー、和花ちゃんは。なになに?佐伯くんに好きって言われた?」

「もう、なぎささんやめて。……言われてないですから。何しに来たんですか?」

「もー、つれないなぁ。封筒切らしててさ、余分にない?」

「ちょっと待っててください」

文具の入っているキャビネットで封筒を探しながら、和花は先ほどなぎさに言われた言葉が頭の中でぐるぐると回り始めた。

(そうだ、私は佐伯さんに好きだと伝えたけど、佐伯さんからは好きって言われていない)

そう思うと急に不安に襲われてしまう。

(佐伯さんは私のこと好きなのかな?もしかして親切心で付き合ってくれてる、とか?)

どんどんネガティブな考えが頭の中を支配し、和花は打ち払うかのように頭を横にブンブンと振る。そんな訳ないと思うのに、一度芽生えた気持ちはなかなか消えることがなかった。

和花は大きく深呼吸して気持ちを切り替える。

「なぎささんすみません。封筒、うちも残り一枚しかないです。一枚で大丈夫です?」

「悪いけどもらってもいい?発注かけてるけどまだ納品されてなくてさ。至急必要なのよ」

ごめんと手を合わせるなぎさに、和花はしょうがないですねと快く封筒を手渡した。

文具の発注も庶務の仕事のひとつだ。
封筒と、そういえば請負社員もファイルがないと嘆いていたのを思い出す。発注をかける前にチーム長に伺いを出して承認をもらうのが決まりとなっている。

和花は、封筒と請負社員用のファイルを購入したい旨をメールに書き起こし、秀人宛に送信をした。秀人は普段会議などで席を外すことが多いため、メールを入れておけば空いた時間に見てもらえる。
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