このまま惚けて、それから
「するなら早───」
すぐだった。
ふわり。奴の香りが鼻を掠めた時、もう既に私の唇は奪われてしまった。
唇を押し付けるように重なった彼のそれは、数秒重なった後、下唇をやわく噛んだ。割れ目にそって舌が入って来る。
噛んだ。
そう、噛んで舌が…………は?
「っちょっと!」
肩を押し返して距離をとる。触れ合っていた温度は、夜の冷えた空気にあっという間に攫われていった。
「妥協してキスしてもいいって言ってんだから普通ソフトでピュアなやつでしょ何噛んでんだよ何ディープな方しようとしてんの何も許容してないんですが」
「いやいやこれからがいいとこだったでしょ。野外は萌えるねしかも実家前ってだいぶスリr」
「てめえの急所もぎ取ってやろうか」
「遊佐さんてばえっち//」
「スラッシュつけんな気持ち悪い!」
後悔した。
キスくらいくれてやってもいい、じゃない。
キスなんかさせてあげるもんじゃなかった。