このまま惚けて、それから
「150円までいいよ」
「嫌だ」
「ハーゲンダッツでもいいから」
「嫌だ」
「青の好きなお菓子もつけていいから」
「ヤダってば。俺べつにアイスめちゃくちゃ好きなわけじゃないし、お菓子もそんな食わないし」
「じゃあどれならいいの」
「未羽」
ドラマや漫画で時々見る、もので許しを乞う方法。
「アイス買ってあげるから許して」「今度おごるから」「このジュースと引き換えに」とか、人間って結構ちょろいし青にも効くかも、と安易なことを考えていたのが数分前のこと。
身体を抱き寄せた青に、頬にそっと口付けを落とされる。
ふっ、と柔らかい笑みを向けられ、アイスごときで釣られるような男じゃないよな、と実感した。
「未羽を俺の好きにしてもいいなら、許してあげてもいいよ」
青の機嫌を損ねた場合、私はこの身をもって彼が満足するまで従わなければならない。
ストーカーごときに逆らえない、情けない女の末路である。