このまま惚けて、それから
「ホント、人の生活こっそり覗いて何が楽しいんだろ?って感じ。好きだけど話しかけられないとか、人生なめてんの?って思っちゃうし。こそこそ嗅ぎ回られるより堂々と告白された方が嬉しいに決まってるのにねー」
あーあー、向日葵よく喋るなあホント。
ストーカーにストーカーの愚痴言ってるの、冷静に面白すぎるし。
まあ青は堂々とストーカーしてる異質なタイプだから、向日葵の言うストーカーには当てはまらないかもしれないけど。
「うん、ほんと怖いね。十分気をつけて帰りな」
「ありがとぉ。やさしいね玄野くん」
「ぜんぜん。また明日」
「うん。未羽も、今度こそまたね」
上手いこと話を強制的に終わらせた青。
軽い愛室を交わしたあと、改札を抜けていく向日葵の背中を見送った。
「ねえ」
「……」
「未羽」
「黙れ」
「まだ名前しか呼んでないけど。外で未羽と話してるなんてレアすぎるやばい興奮してきた」
「気持ち悪い!」
取り残された私と青。
二人きりになってコンマ3秒で、────青の仮面は取れる。