全ては、お前の為
「うん、そうだよ。
だから紅零の誕生日は、ケーキだけ食べてたの」
「そっか」
悲しそうに顔を歪ませる、紅零。

「そんな顔しないで?
私にとっては幸せな日だったんだよ。
紅零のこと色々考えながらケーキを食べてた。
今何してるのかな~とか考えて。
………あ、でも…今日が一番幸せ!」
雨音は、そう言いながら頭を撫でた。

パシッ……!!
その手をすかさず掴む、紅零。
「それ、もうやめない?
もう…俺は、子どもじゃないよ……」
「え……紅、零…?」
「俺はもう…大人だよ……」
そのまま二人の口唇が重なった。

「……ヤバい…我慢できないかも…」
口唇を離し、囁く紅零。
そしてそのまま雨音を押し倒した。
「紅零…ちょっと、待っ……」
「好きなんだ…雨音…」
雨音を組み敷き、口唇をなぞる紅零。

「紅零…退いて…」
「嫌」
「紅零?」
「ねぇ…抱かせてよ」
「え?」
「俺達、夫婦でしょ?」
「でも…今日は…ほ、ほらっ!ケーキ!食べよ?」
雨音は、紅零の力の強さに驚いていた。
あんなに弱く、小さな男の子だったのに……

「後から食べよ」
「でも…」
「雨音は嫌?俺と愛し合うこと」
その間もずっと口唇をなぞり、目をジッと見つめていた。
「そんなことないよ…ほんとだよ…?
ただ…心の準備が……」
「そう…」
そこで雨音を解放した紅零だった。

「紅零…?」
「ごめんね…やっと、雨音が腕の中にいるってわかったから、つい……」
肩を落とす、紅零。

━━━━━━!!!
「……え…?雨音?」
雨音が紅零にしがみつくように抱きついていた。
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