全ては、お前の為
「ここ、使って?
このマンション、僕のなんだ」
そう言って、鍵を渡す露鬼。
バーの下の階の部屋だ。

「なんか、広くね?」
鍵を受け取りながら、言う紅零。
「当たり前でしょ?」
「え?」
「将来、紅零くんと雨音ちゃんが二人で住む予定なんだから!」
「あ、そっか!
ありがと!」
微笑む、紅零。
「いいえ~
なんか欲しい物あったら何でも言って?用意するから。あ、でも指輪は自分で用意しなよ!毎月ちゃんとお金渡すから!」
露鬼も微笑んだ。
「当たり前!」

「あのさ…露鬼」
「んー?」
「今更だけど、露鬼って何者?」
「人間だよ」
「いや、そうじゃなくて……年齢不詳だし」
「うーん、簡単に言えば裏の世界の王様?みたいな」
「は?訳わかんねぇ……」
「僕はこの世界をどうにでも動かすことできるよ。
まぁ……そんな感じ?」
「ふーん。まぁいいか!たぶん説明されてもわかんないし」
「そうだね。これからわかるよ、きっと…
紅零くんが僕を裏切らず、仲間でいてくれたら何でもしてあげるよ」

紅零は思う。
ほんと、掴めない男だ。
この笑顔の中に、どんな闇があるのだろう。
露鬼は紅零の笑顔を見たことがないと言うが、逆に紅零は露鬼の怒った顔を見たことがない。

いつも笑顔なのだ。
口調も柔らかく、穏やかで、優しい。
でも…他人から裏切られた時、簡単に相手を消すのだ。
嘲笑いながら………
そこに、何の罪悪感も躊躇いもない。

これが、露鬼の恐ろしさなのだ。

そして、露鬼も紅零に対して同じことを言ったのだ。
「紅零くん、僕に似てる。
だから、仲間に誘ったんだよ?」


そう……二人は似ている。
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