全ては、お前の為
「紅零」
「んー?」
「私のせいで、色んな辛い思いさせてごめんね…」
「なんで謝るの?」
ゆっくり、紅零が雨音に向き直る。

「紅零が生まれた時から、辛い思いばっかさせてる。
私を守る為にお義父さんにたてついたり、怪我だって沢山させた。
私、家を出た時“これで紅零は自由になれる。もう…私のこと気にしなくて済む”って思ってた。
でも結局紅零は、私の為にって強くなる為に大人になる為に努力ばっかしてる。
もう…いいんだよ?
紅零は、紅零自身の事だけを考えて!」
雨音は紅零をベット上から見下ろして、悲しそうに言った。

「だったら、言っていい?」
「何?」
「俺の傍にいてよ!」
「紅零…」
「俺と二人で幸せになろうよ!」
「……うん」
「俺はこの五年…必死に雨音とこれからずーっと一緒にいる為に、ただそれだけの為に頑張ってきたんだよ。
だから、雨音が傍にいてくれないと意味がない!
絶対俺から、放れないでよ!」

「うん、わかった!ありがとう!
ねぇ、紅零」
「何?」
「手…繋がない?」
そう言って、手を伸ばす雨音。
その手を優しく握る、紅零。
「うん…
てか手、ちっさっ!」
「そう?紅零は大きくなったね…
あんなに小さかったのにな…」
「高校三年間で、急に大きくなったんだ。
雨音一人くらい、全然抱っこできるよ(笑)!」
「フフ…じゃあ、今度抱っこして(笑)
……なーんてね(笑)」
「いいよ、俺が何でもしてあげる!」
「ありがと」
微笑み合う二人。そのまま眠りについた。



でも、雨音はまだ何もわかっていなかった。
その二人の幸せの為に、紅零がしてきた多くの罪を……

「ほんとだよ、何でもしてあげる。
犯罪でも何でも……」
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