全ては、お前の為
「ねぇ…いいじゃーん!」
狩谷がずっとついてくる。

「ちょっと!
ついて来ないで!」
「ねぇ!!」
ガシッと狩谷に、腕を掴まれた雨音。

「━━━━━!!?
嫌!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
途端に震えだし、何度も謝りだした。
「雨音!?」
「ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
「雨音…ちゃ…ん?」
「ちょっと、狩谷さん!雨音の手、離してあげて下さい!!」
「あ…ごめんね!」

狩谷が手を離すと、その場にへたりこんだ雨音。
「はぁはぁ……」
「雨音!?大丈夫よ!誰も怒ってないからね!
大丈夫……大丈夫……」
楓夏が雨音を抱き締め、背中をさする。
「………」
「雨音ちゃん?」
「狩谷さん、許さないから!」
「え?」
「雨音をこんな……」
「いや、俺は手を掴んだだけだよ」
「それが雨音にとっては、恐怖なんです!
そうゆう子もいるんですからね!」
楓夏は狩谷を睨みつけ、言い放った。
そして、スマホを取り出す。

「あ、露鬼?
今まだ会社なんだけど、紅零くんに連絡して迎えに来るように伝えて?
わけは会ってから話す。
━━━うん━━うん、待ってる」
10分も経たない内に、紅零と露鬼が現れた。

「雨音!!」
「あ、紅零くん!こっち!」
雨音と楓夏は、会社エントランス近くのベンチに座っていた。
「紅零…ごめんね……忙しいのに…」
「ううん!大丈夫?何があったの?」
楓夏と反対側の雨音の横に座り、抱き締めた紅零。
「お義父さんのこと、思い出しちゃって……」
「今日露鬼に電話で話した男が、急に雨音の手を掴んだの。それで、雨音が震えだして……」
楓夏が代わりに説明する。

「あー狩谷って男ね!」
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