全ては、お前の為
「じゃあ…会社と、身内は誰がいるんだっけ?
あー、全部消しといて?」
まるで事務的とでもいうような感じに、話が進んでいく。

狩谷は文字通り消えた。
それは、狩谷という人間が存在しなくなったという意味だ。
会社の中での存在、身内、友人、全て消えたから━━━

「こんなの…犯罪だよ!」
「うん、そうだね」
「紅零、警察行こ?私も一緒に償うから!」
「いいよ」

「でも捕まらないよ、雨音ちゃん」
「え?」
「僕を誰だと思ってるの?」
「え?どうゆうこと?楓夏?」
「雨音、露鬼は普通じゃないの。
露鬼に、不可能はないんだよ。
きっと、警察に行っても相手にされないよ!
私も……何度も露鬼を連れて警察に行ったの。
最初は、私も怖くて……
露鬼、私の為に沢山の人を殺してきた。
露鬼と一緒に償うつもりで警察行ったけど、露鬼を見るだけでとりあってくれないの。
だからきっと、紅零くんを連れてっても相手にされないと思う」
雨音は何が何だかわからなくなっていた。

「雨音」
「え?」
「露鬼って、裏の世界での王様みたいな奴でさ。
警察も簡単に動かせるんだよ。
だから、これからも俺がどんな犯罪をおかしても捕まらないんだ。
露鬼や俺を捕まえたら、この世界が壊れるから」
「そんなの、あり得ないよ…」
「だったら、証拠みせてあげようか?」
「え?」
すると露鬼がどこかに電話をかけた。

「━━━━うん、よろしく!
ねぇ…TV見せて?」
露鬼の部下が、タブレットを見せてきた。
「え?せ、戦争……!?テロ!?薬物拡散?なにこれ……」
TVのどの番組も、戦争やテロといった緊急放送をしていた。
「世界がパニックになるね~!
凄いでしょ?僕!
一瞬でパニックでしょ?明日からみんな怯えて暮らすことになるよ。
なんだかんだで、みんな死にたくないからね!」

露鬼はいつもの優しい笑顔で、雨音を見ていた。
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