全ては、お前の為
「あ、それは…実は毎年一人でお祝いしてたの。
紅零の誕生日」
「へぇー、雨音…そんなに俺のこと好きなんだ?」
そう言いながら、雨音に抱きついた紅零。

「へ?
━━━━ったい…!」
雨音は急のことで、びっくりし包丁で指を切ってしまった。
「はっ!ごめん!!
ごめんね!!」
「大丈夫!ちょっと切っただけだから」
雨音は指をパクッと咥え、微笑んだ。
「━━━━////!」
その行為に、紅零はゴクッと唾を飲んだ。

「………紅零?」
「ううん、なんもない。
それより、救急箱は?」
「あ、そこの棚の中」
「ん。取ってくる」
「ありがとう」

救急箱を取りながら、紅零は身体の中の昂りを必死に抑えていた。

まだダメだ……
ちゃんと雨音の気持ちを聞くまでは━━━━
紅零自身は約束を果たすつもりだが、雨音がちゃんと受け入れるかまだわからない。

露鬼にもクギをさされている。
【もし…雨音ちゃんが紅零くんを受け入れなければ、きっぱり引き下がるんだよ!
大丈夫。その時は僕がいくらでも相手してあげるよ】

でも本当は……
触れたくて、堪らない。

「ありがとう」
ベットの脇に座る雨音の下に跪いて、カットバンを貼る紅零。
ゆっくり見上げた。
雨音と目が合う。

「雨音、全然変わってないね」
「え?そうかな?成長したないってこと(笑)?」
「ううん、昔のまま…可愛くて、目が離せない」

「紅零…?」
紅零は少しうつむき、雨音の手を両手で包み込むように握った。
紅零がこんな風に雨音の手を握る時は、何か伝えたい時。
苦しい思い、悲しい思い……色んな思いを。
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