秘密の出産でしたが、御曹司の溺甘パパぶりが止まりません
一年一ヵ月ぶりに会った響一さんは、私が胸に抱く赤ちゃんを見て目を見開いた。
広い空港内。
感動の再会がちらほら見受けられる中、響一さんと私の間にある空気だけが異色だった。
間違っても〝会いたかった〟なんて、〝好き〟なんて言葉がこぼれないよう、心を何重にもロックして鈍感にしておかないと。
今朝、やっとそう決意して、実際そうしたつもりだった。
なのに、響一さんの顔を見た途端に、厳重に固めた感情が愛しさで膨らみ、溢れそうになる。
彼の端正な顔に驚きや疑惑、複雑な感情が広がっていくのをただ眺めるしかできない自分が歯がゆい。
二年間……遠距離だったこの一年一ヵ月を足せば三年もの間付き合ってきたのに、響一さんのこんな顔を見るのは初めてだった。
なんとか微笑みを作った響一さんが「驚いた……」と呟くように言ってから、一歩近づく。
今までだったら、たまにおかしくなって笑い出してしまうほど身体のどこかしらがくっついていたのに、今は私との距離を測りかねているみたいだった。
それは、久しぶりの再会だからではなく、私が抱くこの子が原因だろう。
「その子は、千紗の子だよね?」
慎重に確認する響一さんにうなずく。
嘘をつくつもりはなかった。
「はい。私の子です」
すぐに「俺の子、だよね?」と聞かれ、心臓がドクッと大きく鳴る。
さっきまで驚きでいっぱいだった響一さんの顔は、今は喜びが勝っているようだった。
自分の子どもだとほとんど確信している様子の響一さんを見ていられなくなって、目を伏せる。
彼がショックを受ける顔なんて、とてもじゃないけれど直視できなかった。