堅物女騎士はオネエな魔術師団長の専属騎士になりました。
転移召喚。
相当な魔力量を持っていなければ使用出来ないという、魔術の中でも最上級にあたる召喚術。
その術を初めて目の当たりにして、マリアベルは驚きのあまり呼吸を止めてしまう。
レオンハルトは書類に集中しているのか、召喚されたことに気付いていない。
どうやら朝の書類チェックの仕事をしている最中に召喚されたようだ。
「……ん?」
やがて周りの雰囲気が違うことに気付き、書類から視線を上げる。
横を見やれば、そこには威圧感たっぷりに腕組みをして立つ、ジークウェルトの姿が。
「レオン、アンタねぇ……」
「だからお前そう簡単に人を召喚するなといつも言ってるではないか」
「これが召喚せずにはいられますかっての!話が違うじゃないの!」
マリアベルをほったらかしにして、ふたりの言い合いが始まる。
「仕方ないだろう。これまでのお前の仕出かしたこと、あの第一騎士団の面々が泣きついてきたんだぞ?」
「だって仕方ないじゃなぁい?みんないいオトコばっかりなんだもの。ちょっかい出したくなっちゃうのよ」
「だからってなぁお前、限度ってもんがあるだろう」
ふたりのやりとりを見ている限り、どうやらそれなりに仲が良いようだ。
マリアベルは知る由もない。なぜならジークウェルトはそう姿を現すこともないし、レオンハルトも通常任務では、朝と夕に顔を合わすだけしかないからだ。
彼らの交友関係など知りようもないから、ここまで砕けた関係であったことに驚いた。
しかし。
なぜマリアベルが選ばれたのか。話の内容でなんとなく察する。