堅物女騎士はオネエな魔術師団長の専属騎士になりました。

ジークウェルトはひと通りの化粧を終えると、寝室へ行きナイトガウンから着替え、予め用意されていたパンとコーヒーを摂り始めた。
とはいえテーブルに座って優雅に朝食を、というわけではない。
たまった書類に目を通しながら、時には左手にパン、右手にはペンという両刀使いで仕事と食事を同時進行している。
身振りなど繊細で女性らしくても、こういったところは意外と男らしくで豪快なのだ。

本日の服装は全身シンプルな漆黒のシャツとパンツ姿。
魔術の研究をする場合は動きやすい恰好をするのがいいらしく、長いローブは敢えて着ない。曰く、袖が広がっていて捲るのに大変だからなのだそう。


マリアベルも『待機で』と言われても、ただ待っているだけとはいかない。邪魔にならないように気をつけながら、頃合いを見てコーヒーを注いでみたり食べ終わった空の皿を下げてみたりと、マリアベルもそれなりに仕事をこなしている。

マリアベルは書類とにらめっこしているジークベルトをちらりと見た。

真剣なその表情は、数多の女性を落とすのに容易いだろうと思えるほどに整っている。
その美しさに惚けてため息が零れてしまいそうになるほど。

それなのに女性に興味がないとは、なんとも勿体ないとマリアベルは思う。

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