堅物女騎士はオネエな魔術師団長の専属騎士になりました。
「……ちゃん」

明るくふるまっていても、きっと心の中では。

「マリーちゃん!!」

大きな声で名を呼ばれ、ハッと我に返る。
気が付けば目の前にはジークウェルトが、マリアベルの顔を窺うようにして立っていた。

マリアベルは慌てて姿勢を正す。

「大丈夫?立ったまま寝てたかと思ったわ」

「すみません、少し考えごとをしていて」

まさか呼ばれたことも気づかず、考え込んでしまうとは。

これが突然の襲撃であれば自身の判断が遅れてしまったばかりに、主を危険に晒してしまっていただろう。
騎士としてあるまじきことをしてしまった、この環境に甘えすぎてしまったと、マリアベルは猛省する。

思った以上に落ち込んでしまったマリアベルに、ジークウェルトは少し笑みを漏らした。

「別に危機迫った場面でもないんだし、そんな肩を落とさなくてもいいのに」

「いえ、騎士たるものこのような体たらくでは……、常に気を張り目を光らせ主を守る、それが騎士というものであるのに、私としたことがっ……!」

マリアベルは拳をギリギリと握り、自身の不甲斐なさを悔やみ怒りをあらわにしている。そんなマリアベルをジークウェルトは声を出して笑いながら宥めた。

「あーもう、本当アナタってば真面目ちゃん過ぎねえ!そんな肩ひじ張らなくてもいいの!」

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