堅物女騎士はオネエな魔術師団長の専属騎士になりました。
「お言葉、大変身に沁みました。……その通りですね」
「良かったわ~、分かってくれて」
そっと覆われた手が放される。ほんの少しもの寂しいと感じてしまったのは気のせいだろうか。
「じゃあ研究に戻るわね。もう少ししたらお昼になるから、お願いしたことよろしくね」
「承知いたしました」
ジークウェルトはまた机の前で黙々と研究を始めた。マリアベルはそんなジークウェルトの背中を見つめつつ言葉を思い返す。
目の覚める言葉であった。
自分はこれまでどれだけ狭い考えで騎士を続けてきたのだろうかと。
騎士の教えは確かに大事だ。だがそれを遵守するあまり己を見失ってはいけない。
騎士を続けるにあたって、今日の言葉はマリアベルにとって大きな成長の糧になるだろうと確信する。
ジークウェルトの専属騎士となって不安なことのほうが多かったマリアベルだが、今日に至っては専属騎士となって良かったと素直に思えた。