堅物女騎士はオネエな魔術師団長の専属騎士になりました。


昼近くになり、昼食を取りに一階のエントランスに下りる。
扉の前の騎士セヴィルに聞けば、昼食を手に待つ城の侍従が待っているのが見えた。
どうやら侍従はエントランスの中ですら入れないらしい。マリアベルは急いで侍従の元へ駆け寄る。

「申し訳ない、待たせてしまったようだ」

「いえ、お気になさらず。貴方様が師団長様の騎士様であられますね?こちらが本日の昼食になります。中身はサンドイッチとサラダ、白魚の揚げ焼きオーロラソース掛けにフルーツとなっております」

侍従から袋に入った昼食を渡されると、ふわりと食欲を沸かせるいい香りが鼻腔をくすぐった。

「ああ、ありがとう」

螺旋階段を上がり部屋へと戻れば、既に昼食を摂るようにセッティングされていた。
いつもは朝食と同様、研究作業用の机に物を置いて立ち食いのような形で食事を摂っていたから、マリアベルは驚いてしまう。

「お待たせしました。……用意万全ですね」

「どうせふたりで食べるんだし、少し雰囲気だけでもね。マリーちゃんは向かいに座って」


レースのテーブルクロスが敷かれた丸テーブルに白を基調とした背もたれ付きの椅子。テーブルの上には茶葉の入ったポットとカップ。
昼食を取りに行って戻ってくるまでさほど時間もかかっていないから、すべて魔術で準備したのだろう。
なんと魔術とは便利なシロモノであろうか。魔術力がほぼ皆無なマリアベルは羨ましいと思いながら、昼食をそれぞれの場所に置いた。
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