堅物女騎士はオネエな魔術師団長の専属騎士になりました。

「いただきまぁす」

「……いただきます」

ちらりとジークウェルトを見て、口に運んだのを確認してからマリアベルは袋を開ける。
空腹をさらに増長させる良き香りがたちこめ、勢いよく袋を開けてがぶりつきたくはなったが、さすがに主よりも先に食べるのは気が引けてしまった。
とはいえ主と同じテーブルを囲んで食事するの自体異例なことなのだと思いながらも、おずおずとサンドウィッチを口へと運ぼうとする。

と、ここでマリアベルはあることに気付き、ピタリと手を止めた。


(待てよ。専属騎士として、毒見も大切な仕事なのでは……?)

騎士は戦うこと以外ではあらゆる状況でも生き抜くために、毒の耐性を付けるように仕込まれている。
王族ともなれば専属の毒見役がいるが、騎士だけが護衛をする場合は代わりに騎士が毒見役をすることになっているのだ。
この場合、ジークウェルトが食べるのを制してでも、先にマリアベルが食事に手を付けるべきであった。

(しまった、私としたことがっ……!)

口に運ぶ途中の姿勢で固まった状態で、額からは冷や汗が流れ顔色はサーッと青くなる。

(どうしたらいい?……なんと謝罪すれば)

もし毒でも入っていたなら、自分のミスで主を危険に晒してしまうことになる。
そんなことになってしまったらただでは済まされない。ましてやこの国の偉大なる魔術師だ、マリアベルだけでなく一族の名誉にも影を落としてしまうことだろう。

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