堅物女騎士はオネエな魔術師団長の専属騎士になりました。
午後。
会議に参加するため、マリアベル達は城へと向かう。
ジークウェルトは灰色の厚い生地で出来たフード付きのローブを服の上から羽織った。顔はフードにすっぽりと収まれ、口元しか見えない。
魔術師として塔から出る場合の基本スタイルがこの姿らしい。
「さ、行きましょうマリーちゃん。アタシにしっかり掴まってるのよ~」
掴まる!?と聞き返そうとしたときにはすでにマリアベルはジークウェルトに引き寄せられ、その胸元に収まっていた。
突然の事態に頭が追い付かないマリアベルは、慌てふためくのを通り越して固まった。
そんなマリアベルをよそに詠唱が始まり、ジークウェルトの左手が振り下ろされたところで視界が歪む。
ぐわんと目の前が回る感覚はめまいに似たものだった。ぐるぐると回りながら見えていた部屋の景色が薄れていく。
やがてその視界がまたはっきりとしてくれば、そこはもう城の中だった。
召喚転移術。
まさかマリアベルもここで身をもって経験するとは。
大した時間もかかっていないのに、めまいのような感覚が残り少しふらついてしまった。
「初めてよね?少し慣れるまでに時間がかかるかも。少し無理させてしまったわ、ごめんなさい」
「いえ……、大丈夫です」
頭を軽く小突いて意識をしっかりとさせ、ジークウェルトからさっと離れる。
マリアベルに気を取られ、時間に遅れてしまっては元も子もない。
「じゃあアタシは行ってくるわ。隣に控室があるからそこで待機していて。……まあでもいつもなら軽く夕刻近くまでかかるから、それまでゆっくり休んでおくといいわ」
「はっ、かしこまりましたジーク様。いってらっしゃいませ」