堅物女騎士はオネエな魔術師団長の専属騎士になりました。
マリアベルはその場で礼をし、ジークウェルトを送り出す。
会議室へ入室する音がしその姿が見えなくなったところで、途端マリアベルは体中から力が抜けて、よろめきながら壁にもたれかかった。
(し、刺激が強すぎた……)
転移術の後遺症がまだ残っていたのもさることながら、なにより術を行うためとはいえ、男性に抱きしめられるようなシチュエーションになってしまったことに動揺を隠せない。
いなくなってから、急激に心臓がバクバクと打ち鳴らしている。
(落ち着け、落ち着けマリアベル。相手はジーク様だ)
そう、男性でありながらも中身は女性らしいジークウェルト。女性とだと思えばさほど慌てる必要もないはず。
ましてあれは術のためのもので、深い意味なんて何もない。ああしなければ一緒に転移できないのだから、仕方ないではないか。
そう言い聞かせて落ち着かせようとマリアベルは試みる。
が。
しかし、厚いローブの上からとはいえ、ジークウェルトの胸元はそれなりに硬さがあった。
やはり男性なのだと自覚させるような、女性にはない武骨な部分が……。
(……ってなにを考えている、自分!!)
マリアベルは左右に大きく頭を振る。
そしてはーはーと荒くなった息を整えるように深呼吸をすると、きりっと表情を作った。
(まだ術が残っているのだ。冷静になるためにも、食堂へ行って水を貰ってこよう)
これも術の後遺症かもしれない。そうだ後遺症なのだ、と言い聞かせ、マリアベルは一階にある城の食堂へと向かった。