堅物女騎士はオネエな魔術師団長の専属騎士になりました。
使用人専用の階段を使って、下階へ。食堂は城の西側一番奥にあり中央階段を使えば早く着くのだが、特別なことがない限り侍従と一般騎士たちのみで使用することはできない。
中央階段を使用できるのは貴族たちと役職についた者たちだけだ。
マリアベルは貴族ではあるが、今は騎士として務めている。その場合は使用できないことになっていた。
ゆえに少し遠回りだが使用人が使う階段を使うしかないのだった。
一階に下りれば長い廊下が広がる。在室している部屋の扉の前には騎士が立っており、歩きながら通りすがりに軽く啓礼をして互いを労う。
カツンカツンと靴の音が響いて、城の中は静寂を保っていた。
やがてエントランス近くになればわずかな話声が聞こえ、マリアベルはその話声の方向へ顔を向ける。
エントランスの一角で、男性ふたりがなにやら話し込んでいた。その会話の内容は分からなかったが、表情を見る限り何気ない雑談のようだった。
と、その中のひとりに、マリアベルは息を呑んだ。
(あのお方は……)
その人物、それは……。
「――ああ、誰かと思えばアステリア伯爵のご令嬢ではないですか」
話し込んでいる途中でマリアベルの気配に気が付いたのだろう。
その男は、マリアベルを見るなり作り笑顔を張り付けて声を掛けた。
マリベルは冷静を装う。
その男を前に、胸に手をあて一礼をする。
「……これは、コルネリア伯爵家のご子息様。……大変お久しぶりでございます」
そう。その人物とは。
かの昔、マリアベルが縁談を断ったコルネリア伯爵家のレイニード、その人であった。
中央階段を使用できるのは貴族たちと役職についた者たちだけだ。
マリアベルは貴族ではあるが、今は騎士として務めている。その場合は使用できないことになっていた。
ゆえに少し遠回りだが使用人が使う階段を使うしかないのだった。
一階に下りれば長い廊下が広がる。在室している部屋の扉の前には騎士が立っており、歩きながら通りすがりに軽く啓礼をして互いを労う。
カツンカツンと靴の音が響いて、城の中は静寂を保っていた。
やがてエントランス近くになればわずかな話声が聞こえ、マリアベルはその話声の方向へ顔を向ける。
エントランスの一角で、男性ふたりがなにやら話し込んでいた。その会話の内容は分からなかったが、表情を見る限り何気ない雑談のようだった。
と、その中のひとりに、マリアベルは息を呑んだ。
(あのお方は……)
その人物、それは……。
「――ああ、誰かと思えばアステリア伯爵のご令嬢ではないですか」
話し込んでいる途中でマリアベルの気配に気が付いたのだろう。
その男は、マリアベルを見るなり作り笑顔を張り付けて声を掛けた。
マリベルは冷静を装う。
その男を前に、胸に手をあて一礼をする。
「……これは、コルネリア伯爵家のご子息様。……大変お久しぶりでございます」
そう。その人物とは。
かの昔、マリアベルが縁談を断ったコルネリア伯爵家のレイニード、その人であった。