堅物女騎士はオネエな魔術師団長の専属騎士になりました。

ジークウェルトは生まれながらにして恐ろしいまでの魔力量を有していたため、ジークウェルトが2歳の誕生日を迎えた日に親元を離れ、最低限の使用人と警護の騎士たちと共にライデルン家の別荘へ住まいを移して、ひっそりと暮らしていた。

そして5歳になれば、国から派遣された魔術師アルシュタインが別荘へ住み込むようになり、アルシュタインの下で修行の毎日となった。
人によっては膨大な魔力を有していても、それをうまく使いこなせず魔術師になれない者もいる。そのため魔術師になれるだけの魔力を持った人間は皆同じように幼少期から勉強をすることになるのだ。

だが元々素質があったからか、自身の魔力をコントロール出来るまでに最低でも5年かかると言われているところを、ジークウェルトはものの一年で制御出来るようになってしまった。それにはアルシュタインもこれまでに例がないと驚愕するほどの早さであった。

人よりも何倍も早くマスターしてしまったジークウェルトは、齢10歳で別荘から実家へと住まいを戻す。自身の姿を変える変化術を覚えたためである。
変化術を使い本来の姿を別人にしてしまえば、周りからはその人物がジークウェルトとは分からない。その術を取得してこそ、半ば軟禁にも近いひっそりとした生活に終止符を打つことが出来るのだ。

ジークウェルトはそれほど根暗な性格ではなかった。家で篭り魔術の勉強をするのも苦ではなかったが、外の生活にも興味があった。だから、中等部へ入学してからは、ちょくちょく自身の姿を変えては城下町を歩き回っていたのである。

学園内ではジークウェルトはほぼ人前に姿を現さないと言われていたが、実は間違いであった。
単にジークウェルトとしては姿を見せなかっただけだったのだ。

ちなみにジークウェルトが今のような女性らしい男性となったのは、この時の変化がほぼ女性であったことにも関係している。
これまでほぼ女性と関わることがなかったからなのか、女性という生き物がどういったものか興味があったらしい。ゆえに外出となれば自ら女性となって町に繰り出していたようだった。
そのため性に変化し女性らしい振る舞いや恰好をしているうちに、自然とそれが身についてしまい今に至る。

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