堅物女騎士はオネエな魔術師団長の専属騎士になりました。


そして高等部に上がった頃出会ったのが、マリアベルの兄レオンハルトだ。

初めジークウェルトは女性の姿でレオンハルトと会った。
その時のジークウェルトは、この国では多い明るい栗毛の髪に青色の瞳、整った顔ではあるものの決して派手ではない、どこにでもいるような言わばモブ的な令嬢の姿だった。

だがレオンハルトはそんなジークウェルトに一目見るなり、恋に落ちてしまう。

真面目一徹で、純真無垢、真っすぐなレオンハルト。
出会ってその場でなんとジークウェルトに求婚してしまうという、とんでもない展開となってしまった。

まさかのジークウェルトもそんなことになるとは思ってもみなかったため、ドン引き……でなく、非常に困惑してしまう。

彼がかのアステリア伯爵家の嫡男であったことは、ジークウェルトももちろん知っていた。
レオンハルトは将来騎士団の中でも上に立ち騎士を率いていく者。ジークウェルトも同じくして魔術師団の中心で生きていくことになるだろう。

つまりレオンハルトには、自身が男性でありジークウェルトであるということを知らせても良いということだ。

別にこの姿に変化せず彼の求婚を無視してしまえばいいだけの話なのだが、それではレオンハルトが哀れだろう。本来なら存在しない令嬢を想い苦しむのはレオンハルトも辛いところだ。

まして彼は嫡男である。いずれ爵位を受け継ぎ、結婚して跡継ぎを生まねばならぬ使命がある。下手に初恋を引きずって未来に支障が出ては元も子もない。

そう考え、その後も色々とあった末に、ジークウェルトはレオンハルトに真実を告げた。

その時のレオンハルトの衝撃と落ち込みたるや、言葉では表せられない。ああ悲劇の初恋よ、レオンハルト。
しかしレオンハルトには輝かしい未来があるだろう、これからの素晴らしき人生に幸あれ。

追記であるが、この逸話?はジークウェルトとレオンハルトだけの内密話となっており、マリアベルの知るところではない。

そんなこんなで、今ではわだかまりもなく特別な感情もなく、純粋にお互いが信頼しあえる仲となっていた。


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