堅物女騎士はオネエな魔術師団長の専属騎士になりました。
会議が終わり、国王が先に部屋を出ると続いて他の者たちも出ていく。
ジークウェルトもフードを被り直して部屋を出ようとすると、レオンハルトに呼び止められた。
「お前なあ、いきなり突拍子もないことを言い出しやがって……」
レオンハルトは口元をひくひくと歪ませて、どうやら少しお怒りのようだ。
だがこの程度ではジークウェルトは怯まない。くすりと笑いながらレオンハルトをフード越しに覗く。
「あら、いいじゃないの。せっかくのパーティーだもの、マリーちゃんは騎士でもあるけれど女の子なのだし、参加する権利はあるわよ。これまでだって参加といっても騎士としての参加だけでしょう?他の女の子達はお洒落して参加してるのに勿体ないわ。だからアタシがあの子をバッチリメイクアップしてあげるの!楽しみだと思わない?」
「だからって……」
「シスコンも拗らせすぎちゃダメよお兄様?あの子はアタシの専属騎士、アタシのお仕事中は傍にいてもらわないとね」
ジークウェルトは机に軽く腰掛け、腕組みをしながらフフフと笑っていた。
レオンハルトはわなわなと震えながらも、専属騎士という名前を出されてはこれ以上反論も出来ず口ごもっている。
ジークウェルトはさらに話を続けた。
「さっきも言った通りパーティーに参加するには相手がいなきゃ不審に思われてしまうし、その相手役は信頼出来る人間にしか務まらないのよ。面倒な魔術師の事情を知ってるジークなら分かっているでしょう?……それにね、いつもならアタシは指示役で下の魔術師にお願いするところだけど、今回ばかりはアタシも参加する。……この意味分かる?」
フードを少し上げて、レオンハルトと視線を合わした。
そのジークウェルトの真剣な眼差しに、レオンハルトはハッと表情を変える。
「……嫌な予感がするの。あくまで感だけど、これが意外と当たるのよね。間違いなく何かが起きる予感がするわ」