堅物女騎士はオネエな魔術師団長の専属騎士になりました。
やがて「よし」という言葉と共に、マリアベルの顔から指先からの温もりがなくなる。
「完成よ~。目を開けて、マリーちゃん」
ジークウェルトの言葉に、マリアベルはおそるおそるゆっくりと目を開けた。
その目は、鏡を見るなり大きく見開かれる。
そこに映るは、見慣れない美女。目元はぱっちりと華やかに、肌も毛穴ひとつ見えないほどにつるりと陶器のように滑らかで血色は良く、ぷるりと熟れた果実のような唇。
髪型こそいつものマリアベルだが、顔はマリアベルだとは信じられないほどに美しく変身した女性が映っている。
「わ……」
思わず感嘆の声が漏れる。
これが可愛げがないと言われたあのマリアベルなのかと、半信半疑になって顔をぺたぺた触ってしまいそうになったが、ジークウェルトに止められた。
「ダメよ~、せっかく綺麗になったのに崩れたら元も子もないでしょ。……どう?アナタだってちゃんとお化粧したら映えるのよ。でもそこまで濃いわけじゃないのよ?だから元々映えるお顔なのね」
「……信じられません、本当に私なんですか。なにか魔術とかかけたわけじゃなく?」
「かけてないわよ~!魔術なんてかけなくても十分綺麗なのだし」
鏡をよく見れば面影はしっかりと残っているのがわかる。正真正銘、マリアベルだ。
(そうか、これも私なんだ)