堅物女騎士はオネエな魔術師団長の専属騎士になりました。
本能なのか、それは良く分からない。でもなぜか嬉しくなってしまって、自然と顔が綻んでしまった。
いつもは感情をそこまで表さないマリアベル。特に笑うといった感情をほとんど出すことはなかった。
ジークウェルトの前でも驚いたり困ったり、時たまにそんな表情は出すものの、基本は無表情を崩さなかったマリアベルが、この時ばかりは笑みを零す。
そんなマリアベルの表情の変化を、ジークウェルトはしっかりと見てしまった。
初めて見せた、愛くるしいマリアベルの笑み。
「……っ」
ジークウェルトは思わず手で口を覆う。
不意打ちともいえるマリアベルからの無自覚な攻撃に、ジークウェルトはまんまとやられてしまった。
ジークウェルトは女性に興味がない。
なぜなら今まで惹かれる女性に出会ったことがなく、惹かれると言えば自分にない屈強な身体を持つ男。それなりに胸は高鳴ったし、ジークウェルト自身の趣味や好みも女性が好むものが多かったため、自分が興味を持つ対象は男性だと思っていた。
――思っていた。はずだった。