堅物女騎士はオネエな魔術師団長の専属騎士になりました。

レオンハルトのちくちくとした視線を背中に感じつつ、大広間内へと入る。

緩やかな音楽が参加者の邪魔にならないように流れ、煌めくシャンデリアの下で参加者たちダンスや歓談を楽しんでいた。
壁際には豪華な料理が並べられ、酒の入ったグラスをトレーに乗せた給仕たちが、貴族たちの間を縫うように歩き回りながら勧めていた。

大広間一番奥には壇になっており、そこに王と王妃が座る椅子が二つ並べられている。
だがまだ国王の姿はない。参加者が揃ってからの登場となるのだろう。
もちろん国王が来るであろう場所の傍には騎士が数名立っており、厳重な警備が敷かれていた。

「人が……多いですね」

「そうだね。まあ王女のお披露目だから仕方ないよ。記念すべき日だし」

この国では本来18歳で成人とみなされる。だが王族だけは16歳で成人とみなされていた。
これは結婚や跡継ぎの問題もあるが、王族としての公務を出来るだけ早く行うためという理由もある。

エレノア王国の第一王女ジョセフィーヌは10歳から同盟国である大国へ長期留学をしており、成人となる16歳になることから留学を終え、王国へと戻って来ることとなった。

留学中はこの国に一時帰国することもなかったため、人々の前に姿を現すことのなかったジョセフィーヌ王女。
今日はそんなジョセフィーヌの帰国と、成人になった晴れ姿を披露するための祝いの場でもあるのだ。

「楽しみにしているんだよ、王女の成長した姿をね。私も王女が小さい頃に少しだけ会ったくらいだから、あれからどう美しく聡明に成長したのか非常に興味はある」

「……そうですね」

ジークウェルトとそんなやり取りをするが、マリアベルはどうも居心地が悪く話に乗り切れないでいた。

なぜか口調が受け入れられないのだ。
姿も声も変えているから、中身はジークウェルトでも外見はジークウェルトではないのに。

あの女性らしい口調が聞けないのはどうも落ち着かない。


(不思議なものだわ。初めは戸惑いしかなかったのに)


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