堅物女騎士はオネエな魔術師団長の専属騎士になりました。
……だがしかし。


……。

……。


待てど、返答が来ることはない。

「おかしいな」

部屋にいないのか、はたまた気づかないのか。
マリアベルは再度扉を叩き、同じ言葉をかけた。

すると、ようやくか細い声が聞こえてくる。

「……ううん、なぁに」

「おはようございます、師団長。本日より専属騎士として護衛にあたることになりましたマリアベルと申します!」

「護衛……?ああん、ちょっと待ってねぇ、今扉を開けるわ」

その口調にマリアベルは頭を傾げる。
聞こえてきたのは女性にしては低い声。しかし物腰の柔らかな口調は女性そのものだ。

(……はて、師団長は女性だっただろうか。話では男性であると聞いていたのだが、あまり人前に姿を出さないお方だ。果たしてそれが真実かどうかも分からない。しかし、それにしては声がやけにしっかりとしているし……。)

などと考えていると、赤い扉が勢いよく開けられる。
その勢いに、マリアベルの身体が大きく跳ねた。

目の前に立っていたのはすらりとした体躯の、目鼻立ちがはっきりとした美しい顔立ちの男性。
その男はマリアベルを見るなり、その目をさらに大きくさせた。

「ええ!?嘘でしょ!?」

「……?」

「声が少し高いものだから、若い男の騎士が来たと思ったのに!」

そう言うと、目の前の男は地団駄を踏んだ。

「キーッ!くやしいッ!」

そして唇をかんで拳を握っている。
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